痛み

ワクチン接種後の肩の痛み(SIRVA)への治療について

2022年10月28日更新

循環器内科 吉岡 亮、整形外科 江草 真

筋肉注射のワクチンを接種した後に、五十肩のような痛みが続くことがあります。2週間以上経っても痛みが続く、腕が上がらないなどの症状が続く場合には、神経障害やSIRVA(シルバ)などの可能性が考えられます。当院ではSIRVAによる痛みに対してカテーテルを用いた運動器カテーテル治療が可能です。

SIRVA(シルバ)とは?

モヤモヤ血管の写真

SIRVAは、Shoulder Injury Related to Vaccine Administrationの略でワクチン接種後の合併症です。
ワクチン接種に関連した肩関節障害と訳され、ワクチン接種後に生じる肩の急性炎症で、肩の疼痛の持続や可動域制限(腕が上がらなくなる、後ろに回らなくなる)が発生します。
ワクチン筋肉注射後、接種部位の痛み、腫れ、筋肉痛、関節痛は通常であれば2、3日で軽快していきます。長くても2週間以内に軽快することがほとんどですが、稀に3ヶ月以上も痛みが持続し、慢性疼痛に移行することがあります。

なぜ起こるのか?

三角筋下滑液包の図

筋肉注射の手技により三角筋(肩の筋肉)の深い部位にある三角筋下滑液包(関節の近くにある液体で満たされた袋)内に、ワクチンが不適切に注入されたことが原因と考えられています。
個人や年齢によって解剖学的構造は異なり、現実的にワクチンの注入部位や深度を証明することは困難です。また、手技に関わらず起こる可能性もあります。
新型コロナウイルスを押さえ込むため、多くの方に筋肉注射をおこなったため、このような有害事象が発生したと考えられます。

痛みの原因「モヤモヤ血管」とは?

炎症の起きる部位には、その修復の過程で血管が増えます。
痛みの原因部位にできる異常な新生血管は、血管造影画像でモヤモヤとぼやけて見えるため、“モヤモヤ血管”と呼んでいます。モヤモヤ血管のそばには、異常な神経も増殖していることが分かっています。
これらが痛みを発するほか、異常な血流も増え、局所の組織圧が高まることなどにより、長引く痛みが引き起こされると考えられています。
一般に、40歳以上になるとモヤモヤ血管を自然に減らす力が衰えてくるため、長引く痛みが生じやすくなります。

運動器カテーテル治療

治療のイメージ

手首や肘、足の付け根の血管から太さ0.6mmほどの細長いカテーテルを動脈の中に入れて、痛みのある場所に薬(塞栓物質)を投与します。

正常な血管は一時的に流れが悪くなっても再開通しますが、モヤモヤ血管は脆弱なため、塞栓物質の投与で退縮していきます。このような血管構造の違いを利用して、痛みのある部位を治療します。

体表面からの注射よりも、直接的にモヤモヤ血管に作用するため、強力な治療効果が期待できます。また、注射が困難な部位においても、正確にカテーテルを導くことにより、安全かつ確実に薬を届けることができます。

繰り返し注射を続けると、それだけ組織を傷つけることになりますが、カテーテル治療では皮膚や筋肉、腱などの損傷を避けることができます。

使用する薬剤について

運動器カテーテル治療で用いる薬剤は「イミペネム・シラスタチン」という薬剤で、20年以上前から「抗生物質(細菌を退治する薬)」として認可、使用されているものです。

この薬は溶けにくいため、少量の液体と混ぜると小さな「粒子」になります。この粒子が「モヤモヤ血管」を詰まらせることで、痛みの原因を消失させることができます。粒子は次第に溶けていきますが、「モヤモヤ血管」は通常の血管とは違い新しくできた脆い血管のため、一時的に詰めるだけで再開通せず壊死します。

一方、通常の血管は血流が再開通するため、薬が流れても体の組織に影響を与える可能性は非常に低いといえます。現在までに全国で5,000人以上の方がこの治療を受けていますが、今のところ重大な副作用報告はありません。

  • TAME治療で用いる薬剤「イミペネム・シラスタチン」は20年以上前から抗生物質として認可、使用されていますがモヤモヤ血管の治療に対しては認可されていないため、「未承認医薬品」になります。
  • モヤモヤ血管に対して、「イミペネム・シラスタチン」と同一の成分や性能を有する国内承認医薬品はありません。
  • アメリカのFDAで先進医療として承認されています。
     承認日:2021年10月13日 使用者数:250人 副作用報告:重大な副作用報告はありません。

治療の効果

治療後すぐに痛みが減る方もいれば、数ヶ月かけてゆっくりと痛みが無くなっていく方もいます。

運動器カテーテル治療によるリスク・副作用

安全性の高い治療ですが、いくつか気をつける合併症があります。ほとんどは一過性で半日から数日以内に消失します。色素沈着など数週間継続することもありますが、ほとんどは自然と消失します。また、いずれも頻度は低いと考えられています。

詳しくは、診察時に医師にお伺いください。

治療までの流れ

初診 1.モヤモヤ血管の有無を調べる
問診により、痛くなった経緯や痛みの部位、症状の出方や性質などを確認し、視診、触診のほか、エコーまたはMRIの検査等でモヤモヤ血管を確認します。

2.治療の提案
モヤモヤ血管が疑われる際は注射や動注、カテーテル治療に移行するなど医師が症状に合わせた提案します。

※受診当日に、カテーテル治療をすることはありません。
※全ての患者さんが、カテーテル治療の適応になるわけではありません。
カテーテル治療当日 1.予約した治療日に来院し、カテーテル室で心電図や血圧計を装着後、麻酔注射をします。
※局所麻酔のため意識はあります。麻酔の注射と、カテーテルを入れる際は少し痛みをともないます。
※希望の場合には、静脈麻酔で眠りながら受けることも可能です。

2.治療時間は1時間程度で、治療後は1時間程度は安静にしていただきます。
※上半身の治療の方は、歩いてベッドに移動することができます。

3.安静後、医師からの説明を聞き、治療は終了です。

※入院の必要はありません。治療後、歩いて帰宅することができます。

治療費用

治療費は自費診療となります。
国内ではまだ保険診療と認められていないため、全額自己負担となります。詳細は医師にご確認ください。
治療回数は1回です。入院の必要はありません。

片側 195,000円(税込価格: 214,500円)
診察費用 初診察費用:7,000円(税込価格: 7,700円)
再診察費用:5,000円(税込価格: 5,500円)
※目安:治療後1~4回

治療費用の例

よくあるご質問

治療費が返金される対象は?
運動器カテーテル治療を受けた方で、医師の指示通り通院したにもかかわらず、全く痛みが改善されなかった場合に手術費用のうち材料費(10万円)を除いて返金をさせていただきます。但し、対象外がありますので、必ず医師に確認してください。

民間の医療保険は使えますか?
カテーテル治療は医療行為の区分としては「手術」にあたるため、加入の保険タイプによっては給付金が受け取れることがあります。但し、加入している医療保険のプランによって異なるため、詳細は各保険会社へご確認ください。

医療費控除はうけられますか?
手術費・治療費は、確定申告の際、医療費控除の対象となる場合があります。
詳細は管轄の税務署にお問い合わせください。病院の発行する施術費用の領収書を、確定申告の際に提出してください。
※医療費控除とは1月から12月までの間に、本人または家族(税法での生計を一にする親族)が支払った医療費が10万円を超える場合、確定申告で税金還付が受けられるもの。(高額療養費制度ではありません。)

支払い方法

現金以外にクレジットカード(一括払いのみ)、キャッシュカード(デビット機能付)でお支払いができます。
※一部のカードでご利用できない場合があります。

診療日

金曜日 午後

治療日

火曜日

治療をご希望の方へ

お電話で「ワクチン接種後の肩の痛みへの治療希望」とお伝えください。
完全予約診療、自由診療になります。

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