岡山旭東病院
 岡山旭東病院は脳・神経・運動器疾患の治療に力を入れています
We treat all of neurological and motor system diseases.
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帯状疱疹とは
 帯状疱疹(herpes zoster, shingles)は、一定の知覚神経支配域の皮膚、粘膜に紅暈を伴う小水疱が集族して出現し、神経の疼痛を呈するウイルス感染症です。原因ウイルスは水痘?帯状疱疹ウイルス (varicella-zoster virus: VZV)であり、初感染で水痘、潜伏後の再活性化(回帰発症)で帯状疱疹を生じます。VZVは他にも肺臓炎、肝炎、血小板減少症、角膜炎、筋炎、神経障害などの原因となります。帯状疱疹以外の神経障害には髄膜炎、脳炎、脊髄炎、多発性脳神経炎、末梢神経障害、Ramsay-Hunt症候群、Guillain-Barre症候群などが報告されています。
 
疫学・病態
 VZVの初感染は水痘を生じます。90%以上は思春期までに、そして60歳までにはほぼ100%が水痘に罹患するか抗体陽性となります。約10%は不顕性です。ウイルスは脊髄後根神経節や三叉神経節に潜伏感染、長期間の後に再活性化されて帯状疱疹をひき起こします。成人のVZV抗体陽性率は90%以上であり、三叉神経の65?90%、胸髄神経の50?80%、顔面神経膝神経節の70%にウイルスが検出されます。帯状疱疹罹患率は人口1000人当たり年間1.5?3人です。罹患率は加齢とともに高まり、20歳以下は少なく、75歳以上では1000人当たり10人以上、一生の間に罹患する確率は10?20%です。発症には年齢と細胞性免疫低下が関与し、ストレス、日焼け、外傷、悪性腫瘍、膠原病、副腎皮質ホルモン、免疫抑制剤などが誘因となります。再発率は1%程度です。
症状
1) 皮膚、粘膜症状
末梢神経の分布に一致して掻痒感、ヒリヒリするような異常感覚、疼痛を生じます。発熱、頭痛、全身倦怠感を伴うこともあります。数日から1週間で浮腫性紅斑が出現し、続いて、紅斑部に丘疹、小水疱を生じます(軽症)。通常片側性で、時間とともに一定の神経支配域に限局していることが明瞭となります(中等症)。水疱の内容は始め透明ですが、数日で混濁し、膿疱となります。疱膜は5〜7日で壊死し、びらんや潰瘍となります(重症)。約2週間で痂皮化、3週間で軽い瘢痕、色素沈着を残して治癒します。感覚障害のみで皮疹を生じなかったり(zoster sine herpete)、有痛性紅斑のみで治癒することもあります。好発部位は体幹で、胸髄神経域が50〜55%、三叉神経20 %(I枝15〜18%、他は数%)、腰髄神経13%、頚髄神経11〜2%、仙髄神経数%といわれています。口腔、外陰部、膀胱の粘膜にも水疱、びらん、潰瘍などを生じることがあり、膀胱内病変では膀胱炎症状を呈します。高齢者や、免疫抑制剤使用者など基礎疾患のある人では原発部位から離れて水痘様散布疹が出現することがあり、汎発性帯状疱疹と呼ばれます。

2) 神経症状
罹患した知覚神経の神経節以下に炎症を生じ、分布する皮膚体節神経(通常隣接する1〜3体節)に疼痛(神経痛)が出現します。掻痒感やヒリヒリ、ピリピリする感覚異常で始まることもあり、皮膚・粘膜症状に3〜4日先行します。疼痛は軽い鈍痛から、灼熱痛、刺すような激烈な痛みなど様々であり、感覚異常、痛覚過敏、皮疹部の感覚鈍麻を伴います。5〜10%の症例では、神経炎が前根や脊髄(前角)に及び、分節的な運動麻痺、筋萎縮を生じます。頚髄,腰仙髄神経の帯状疱疹で発現率が高いようです。耳介周囲の帯状疱疹に顔面神経麻痺を伴う場合は、ラムゼーハント(Ramsay Hunt)症候群と呼ばれます。顔面神経膝神経節でのVZV再活性化で生じるもので、外耳道や耳介の帯状疱疹と共に同側の末梢性顔面神経麻痺を生じます。味覚異常、内耳神経障害による耳鳴、聴力障害、眩暈を伴うこともあります。一般に、単純ヘルペスによるBell麻痺と比べて症状が強く、予後も悪いです。片側性に顔面神経麻痺や多発性脳神経障害みる場合、皮膚症状が目立たずともVZVが原因となっていることがあり、耳鏡による外耳道の視診など、皮膚症状の検出に努めます。仙髄領域の帯状疱疹では直腸膀胱障害を生じることもあります。
VZVが中枢神経系方向に波及すると、髄膜炎、脊髄炎、脳炎を生じます。免疫系に異常がある場合に生じ易い。髄膜炎では頭痛、嘔気、項部硬直などを呈しますが、髄液検査のみの異常も含めると30〜50%に生じると言われます。脳炎は稀であるが、発熱、髄膜刺激症状、意識障害、けいれんなどを呈し、水疱発現から平均5日で発症します。
帯状疱疹に伴う神経痛は通常1〜2週間で軽減しますが、高齢者を中心に遷延します。皮膚症状消褪後(発症から1ヶ月以上)も疼痛が持続するものは帯状疱疹後神経痛(postherpetic neuralgia: PHN)と呼ばれます。高齢者ほど生じ易く、50歳以上では約45%と高率です。急性期の疼痛は神経の炎症、PHNは炎症による神経の非可逆的損傷で生じると考えられており、損傷が強いほど、疼痛も強い傾向にあります。

3) 眼症状
三叉神経第1枝領域の帯状疱疹では角膜炎、結膜炎、虹彩毛様体炎、網膜炎などを合併することがあり、眼部帯状ヘルペスと呼ばれます。鼻尖や鼻背に皮疹を認める場合に合併が多いと言われます(Hutchinson’s rule)。ラムゼーハント症候群では閉眼不全の結果、機械的刺激で角膜びらんを生じることがあり、注意が必要です。

4) 脳卒中
 帯状疱疹、特に三叉神経ないし上頚部の帯状疱疹に罹患後数週間して脳卒中を生じ易いと言われています。VZVが同側の血管(中大脳動脈など)に血管炎を惹起し、脳梗塞を生じて対側に麻痺症状を生じると考えられています。

5) 後遺症
 発症2ヶ月後の時点で神経痛が7.9%、皮膚の2次感染が2.3%、眼症状が1.6%、神経障害による運動障害が0.9%、髄膜炎が0.5%、聴力障害が0.2%と報告されています。
診断
 特定の神経支配域に一致して片側性、帯状に浮腫性紅斑、丘疹、水疱が集族し、疼痛を認めた場合、容易に診断できます。検査では、ペア血清(発症1週以内と2〜3週目の血清)でVZV抗体価の上昇をみます。一般にVZVはIgG, A, M値とも発症5日目に最大値に達し、IgA, Mは約1ヶ月で下降、IgG高値は持続します。補体結合反応(CF)は発症1週間程度で陽性、2〜4週で最高値となり、3〜4ヶ月で下降します。早期診断には髄液、患部神経内液や水疱内容のPCR検査が有用です。補助的診断として神経や神経節、脳、脊髄の障害部位がMRIにて異常信号域として描出されることがあります。
治療
通常は予後良好で、3〜4週間で治癒します。従って基礎疾患のない患者では治療は、急性期の皮膚症状、疼痛への対症療法で十分です。しかし、帯状疱疹後神経痛を生じると終生にわたり疼痛に悩まされることになり、その予防に努める必要があります。特に高齢者では高率に神経痛が残存するため、神経損傷が可逆的な発症初期に抗ウイルス薬を用いた全身治療を考慮します。ラムゼーハント症候群も顔面神経麻痺の遺残を防ぐため、抗ウイルス薬を用います。重症例、運動麻痺、中枢神経症状、眼症状の合併例、糖尿病、悪性腫瘍、免疫抑制薬使用などの基礎疾患のある患者でも全身治療を考慮します(表1)。

1) 全身治療
 皮膚症状出現から72時間以内に抗ウイルス薬を投与した場合、極期の短縮(3日以内)、疼痛の軽減、肺臓炎、脳脊髄膜炎など他臓器への波及の抑制、帯状疱疹後神経痛予防が期待できます。経口抗ウイルス薬としてはvalacyclovir 1000 mgを8時間おきに7日(バルトレックス 6錠3分服)、あるいはacyclovir 800 mgを4時間おきに7日。重症例、免疫不全例ではAcyclovir 250〜500 mg(重症脳炎では750 mg)を1日3回、7〜10日静脈内投与することがあります。副腎ステロイドホルモンを併用すると、皮膚症状、疼痛の改善が促されます。しかし、帯状疱疹後神経痛の発症予防には効果が証明されていません。神経症状が消失、ないし固定するまではメコバラミン(メチコバール(500μg)3錠3分服)、ATP、循環改善剤などを併用することもあります。

2) その他の治療
<1>皮膚症状
 軽度の皮疹や浮腫性紅斑には非ステロイド系消炎鎮痛薬(アンダーム軟膏、スルプロチン軟膏など)を塗布します。抗ウイルス薬を併用すれば、治癒が早いようです。中等症以上の皮疹には抗ウイルス薬の全身投与を行います。この場合、外用抗ウイルス薬は不要です。水疱や潰瘍部位には2次感染予防も大切であり、患部の清潔と乾燥に心掛けます。加えて、イソジンなどによる患部消毒の後、抗生物質軟膏(ゲンタシン軟膏)や抗生物質添加副腎ホルモン軟膏(リンデロンVG軟膏)を塗布します。口内疹にはイソジンガーグルによる含嗽を行います。

<2>神経症状
 疼痛には非ステロイド系鎮痛薬の内服ないし坐薬を用います。健康成人への早期治療開始例ではこれで十分です。効果不十分な場合、特に三叉神経領域の疼痛にはcarbamazepine(200 mgを眠前から漸増)やphenytoinが奏効します。強い疼痛には星状神経節ブロックや硬膜外ブロックによる交感神経ブロックを追加します。前者は三叉神経,頸髄神経、上位胸髄神経領域、後者はそれ以下の症状に対し行います。知覚神経ブロックを併用することもあります。ラムゼーハント症候群では抗炎症、浮腫軽減の目的で副腎皮質ホルモン(プレドニン60 mg 朝1回から始め、2週間で漸減、中止)を使用する。重症例や、ステロイド使用困難例では組織の血行や浮腫の改善目的で星状神経節ブロックを併用します。麻痺が高度な例では発症2週間以内の顔面神経減荷術を考慮します。麻痺発生の2週間後に顔面神経の誘発筋電図で筋収縮が誘発されるものは予後良好、電位振幅減少率が80%以上では後遺症を残す危険性があります。麻痺出現から3日以内に治療を開始した場合の完全寛解率は75%、7日以後の開始では30%で、自然治癒と同等です。なお、リハビリテーションとして表情筋のマッサージを行います。低周波刺激などによる強い刺激は神経の過誤支配を促進する恐れがあり、当院では行っておりません。

<3>眼症状
 眼病変には抗ウイルス薬の全身投与を行います。局所療法として、結膜炎にはacyclovir眼軟膏を用います。角膜炎の場合にはこれにステロイド点眼薬を加え、2次感染予防目的で抗菌薬ないし抗生物質の点眼薬を併用します。ラムゼーハント症候群では閉眼不全が進行するため、程度に応じて人工涙液(マイティア)を頻回に点眼します。ほこりの多いところを避け、眼帯を用いるなどして角膜を保護します。角膜びらんを生じた場合にはコンドロイチン硫酸やビタミンB2の点眼薬を用います。

<4>帯状疱疹後神経痛(PHN)
 多くの場合、満足できるコントロールは困難であり、予防が最も大切です。内服薬として抗うつ薬,抗けいれん薬、鎮痛薬、外用薬としては非ステロイド系鎮痛薬を配合した軟膏、湿布薬などを用います。抗うつ薬ではamitriptyrine, desipramine, maprotiline, nortriptyline,などの三環系抗うつ薬に二重盲検による効果が証明されています。抗けいれん薬ではcarbamazepine, phenytoinが用いられますが、効果に個人差があり、確実な効果は期待できません。Carbamazepineは持続性疼痛には効果がなく、間欠痛に有効な場合があります。前者は100〜200 mg眠前1回、後者は180〜200 mg2分服から漸増し、眠気、ふらつきなどの副作用に留意します。Carbamazepineは投与3週目頃から薬疹を生じ易く、生じれば中止です。非ステロイド系鎮痛薬には殆ど効果が期待できません。抗不整脈薬のmexiletine、NMDA受容体への作用を持つdextromethorphanにも有効例があります。神経ブロック治療については、交感神経ブロックは神経損傷の回復促進、知覚神経ブロックは脊髄への求心入力を遮断し、過敏化抑制することでPHNの発展が予防できます。しかし、完成したPHNには効き難いようです。皮下への麻酔薬注入や知覚神経ブロックで一時的な鎮痛効果を得ることは可能ですが、過敏性発展が指摘されています。

表1 帯状疱疹患者への抗ウイルス薬投与方針*

静脈内投与(acyclovir 1v. 250 mg 8時間おき、1日3回が基本)
免疫機能低下患者
  悪性腫瘍、移植後、膠原病、ステロイド治療中、AIDSなど
脳炎、髄膜炎合併例
 (重症度に応じacyclovir の1回量は250〜500 mを1日3回、10〜14日間まで使用)
運動麻痺の合併
重症な皮疹(水疱が癒合し、びらん、潰瘍を形成、あるいは汎発疹の出現)
経口投与acyclovir 800 mg 1日5回、あるいはvalacyclovir 1000 mg 1日3回
強い疼痛、眼症状の合併
慢性疾患の合併(糖尿病、慢性呼吸不全など)
50歳以上
中等度の皮疹
軟膏(アラセナA)
軽度の皮疹

*皮疹出現から72時間以内に開始すれば効果良好。
 投与期間は5〜7日間、あるいは新しい皮疹が48時間以上出なくなるのが目標。
 腎障害があれば減量ないし全身治療は行わない。

柏原健一帯状疱疹(JOHNS 19: 919-922, 2003.)を参考に作成
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